私たちは,日々の暮らしの中で様々な情報に触れています。 「情報」と聞くと,コンピュータなどのIT機器で扱われ るものを連想しがちですが,新聞・雑誌・テレビ・ラジオなど で流れるニュースのように,その形は,文章であったり, 映像であったり,音声であったり,様々なものがあります。 こうした「情報」は,よくよく考えると,コンピュータや インターネットの発明以前も存在しており,それらが 私たち自身の活動に影響を与えているのですから,「情報」 の本質はIT機器などとは無縁であることが分かります。
「情報」を考える際に,注目の仕方を決めて分類をする 場合があります。前段落で述べた「文章」「映像」「音声」 のような分類もその1つですし,「新聞」「雑誌」「テレビ」 「ラジオ」なども別のとらえ方による分類と呼べます。 こうした分類の中で,しばしば「デジタル」と「アナログ」 とに分ける場合があります。言葉としては,よく使われる ものですが,その違いは何でしょうか。
時計の形式で「デジタル」「アナログ」に区別されることが あるので,デジタル=数字表記, アナログ=(時針・分針・秒針による)図形的表記, のような誤解をする人も中にはいるかも知れませんが, それぞれを日本語で表した「離散的」と「連続的」とで 比べると分かり易くなります。同じ数字表現でも, 1と2の間には何もないと考えて扱うのが「離散的」, つまり「デジタル」ということで,1と2の間に無限の 数があると考えて扱うのが「連続的」,すなわち 「アナログ」なのです。
現在のコンピュータのほとんどは,デジタル式なので, これらのコンピュータが得意とする情報は必然的に 「デジタル」なものとなります。前段落で述べたように, その本質は「離散的」なので,「情報」とは,他のモノや 状態などと明確に区別できるモノ,という捉え方をする ことが第一歩でしょう。 このことは「アナログ」な情報であっても同じです。
そこで,大事になるのは「違い」を見抜く力でしょう。 これは,裏返せば共通点を見つける力とも言えます。 さらに言えば,相違点を決めるための視点が重要です。
たとえば,以下の単語をいくつかのグループに分類してみてください。
どの視点で分類するかによって,グループ分けの結果も変わることに気づくはずです。 少なくとも,3つの視点が考えられますね?
それぞれの視点を理解するためには,単語とそれが示す実体やその特徴に関する知識あるいは観察 が必要だということも分かると思います。
「違い」を見抜くことに意識が向くようになったら,「順序」について考えてみましょう。 日常の暮らしの中でも,順序をつけることは重要です。
たとえば,たくさんの用事を一度にこなせばならない時,それらをすべて書き出しておき, プライオリティ(優先順位)をつけてから始めるのがムダを省くことにもなることは容易に 想像できるでしょう。 この時,用事をすべて書き出すことで,ある用事を済ませるために, あらかじめ行なっておくべき別の用事があることに気づかされることがあります。 また,移動のムダを省くためには,「場所」を書き足しておくことも必要かも知れません。
大学生になると,家族と離れて一人暮らしを始める人もいるでしょうから, 例として,休日に自宅でお昼のご飯を自分で作る場面を考えてみましょう。 とりあえず,食べたいのはパスタだということにして,やるべきことを 書き出してみます。
もちろん,これだけでは十分ではありません。 そこで,パスタを作るために必要なことをあげてみます。
そもそも,食べたいパスタを作るための材料が分からないなら,材料の一覧・分量を 調べる必要がありますね。 また,一人暮らしを始めたばかりなら,調理器具も買い揃えなければならないかも知れません。 そうすると,レシピを検索サイトで調べたり,買い揃えるための お金が十分か確認したり,などなど,やるべきこと・確認するべきことが次々と 浮かんでくるはずです。
買物のついでに済ませるべき用事を思い出したら(お腹のすき具合と相談しながら), さらにリストを詳細にしておくことも必要かも知れませんね。
ここまでの話は,もしかすると「情報」らしく見えないかも知れません。 例示したものが具体性に欠けていることも理由の一つでしょう。
冒頭で述べているように,現在のコンピュータのほとんどはデジタル式なので, 例示したものをコンピュータで扱う時には,デジタル情報に形を変えておく必要があります。 メンドウだと思われるかもしれませんが,実は,文字情報もコンピュータ内では 完全なデジタル情報なので,フツーに文字入力されたものは(意識していなくても) デジタル情報に変えられて記憶されているのです。
いずれにしろ,「情報」を活用するということの中には,相違点や共通点の違いによって, 行動の仕方を決めていくこと,ということが含まれます。 自分だけではなく相手がいる場合には,自分の知りたいことや相手に伝えたいことが 「情報」だということが言えるでしょう。 こうしたコミュニケーションを上手に行なうには,自分と相手との共通点がどこにあるかを 早目に判断することです。お互いが,辞書をどの程度共有しているかを探る,といっても いいでしょう。
たとえば「ヤバイ」という言葉は,世代によっては受け取り方が異なります。
危険や不都合な状況を連想する世代と,むしろ好ましい状況を連想する世代では,
「情報」がゆがんで伝わる,つまり,誤解を生む元になりかねません。
ほとんどの場合は,「ヤバイ」が使われる前後の発言などの状況によって
判断できるはずですが,どちらか一方の意味しか理解できない場合では意思疎通が
うまくいくはずもありませんね。日常の言葉の意味が,時代とともに変容していくのは
仕方のないことかも知れませんが,うまく対応するには,自分の辞書のカバーできる
範囲をできるだけ広げておくということが必要なのでしょう。